具足

仏具とは、お葬式などの宗教儀式の際に用いる道具の事です。
具足とは、その仏具の中の1つで、お仏壇にお祀りする道具です。
具足は、宗旨宗派やお仏壇の大きさによっても組み合わせなどが変わります。
仏具の数に応じて、三具足、四具足、五具足となりますが、多いもので、七具足、十具足、十一具足などもあります。

ここでは、一般的に使われることが多いと思われる三具足~五具足のご説明をさせて頂きます。

・三具足(みつぐそく)
具足の基本セットで「花立て」「香炉」「火立て」の事を言います。

・四具足(しぐそく)
上記三具足の「花立て」「香炉」「火立て」に「花立て」を1つ加えたものです。
主に、浄土真宗で用いられることが多いですが、浄土真宗でも宗派によって、用いられる仏具が異なります。自分の家の宗派を調べてから、購入する方が良いでしょう。

・五具足(ごぐそく)
三具足の「花立て」「香炉」「火立て」に「花立て」と「火立て」を加えたものです。
つまりは、「花立て」と「火立て」を対にしたものが五具足です。
但し、五具足をお祀りすると、置く場所も相応に必要になります。小型のお仏壇には五具足をお祀りする事が難しい場合もあります。その場合は、三具足をお祀りしましょう。
配置できるかどうかは、事前にお店に確認しましょう。

具足の配置

お仏壇に仏具をお祀りし、飾る事を「荘厳(しょうごん)」と言います。
「荘厳」はサンスクリット語のvyūha(ヴィユーハ)=「美しく飾ること」の意です。
つまりは、具足も美しくお祀りする事が大切で、配置も決まっています。

三具足の場合
中央に「香炉」、仏壇に向かって左側に「花立て」、右側に「火立て」となります。

四具足の場合
向かって左側から「花立て」「香炉」「火立て」「花立て」となります。
三具足の向かって一番右に「花立て」を加えたものです。
但し、前述のとおり、宗派によって置き方や置く仏具そのものが変わる場合もありますので、要注意です。

五具足の場合
向かって左側から「花立て」「火立て」「香炉」「火立て」「花立て」となります。
※中央に「香炉」を置いてその両サイドに「火立て」、さらにその外側に「花立て」です。

電化仏具

仏壇のローソクや線香の火の消し忘れによる火災が少なからず発生しています。

仏壇のお参りの手順通りに行えば、火の消し忘れはありませんが、突然の来客や電話が来ることでついうっかり忘れてしまう事はあり得ることです。そんな不安を払拭するのが、電化仏具です。現在、電気ローソクや電子線香など様々な仏具が販売されています。

おりん

おりんは、仏前で手を合わせる際に「りん棒」を用いて鳴らします。
その綺麗な音色で、空気を清め、邪気、邪念を取り払ってくれるものとされています。
おりんには様々な種類があり、昔ながらの重厚なものから、手のひらサイズの小さいもの、スタイリッシュな物などがあります。
お仏壇に合わせて、おりんを選びましょう。

おりんの飾り方

飾る位置は、お仏壇の右側の最下段が良いです。
仏前での作法として、おりんを鳴らすのは右手で行います。これは、仏教では右手が清浄を、左手が不浄を表すからです。
仏教徒の多いインドのテーブルマナーで右手を使って食べるのもそのためです。

おりんの鳴らし方

おりんを鳴らす回数は通常2回とされています。1回目は優しく、2回目に少し強めに鳴らします。
但し、おりんの鳴らし方も宗派によって異なります。

真言宗:鳴らす回数2回。1回目は優しく、2回目は少し強めに鳴らします。

曹洞宗:3回鳴らすお寺と、内側を2回鳴らすお寺があります。

浄土宗:読経の時のみ鳴らします。つまりお参りの際には鳴らしません。

浄土真宗:勤行(おつとめ)の時のみ鳴らします。お参りの際には鳴らしません。

おりんのお手入れ

日頃のお手入れは、やわらかい布などで拭くだけで構いません。但し、おりんは金属なので、変色する事もあります。その際は、おりん専用のクリーナーでキレイにしましょう。
専用のクリーナーを使ってもキレイにならない時や表面が剝がれてきた時は買い替えのサインです。
仏具を買い換えたら不吉と思われる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
むしろキレイな仏具でお参りした方が気持ちが良いものです。

おりんを購入する際の注意点

「おりん」を購入する際は「りん棒」と「りん座布団」も購入しましょう。
また購入する際に一番注意したいのが、「おりん」の大きさです。
仏壇の大きさに合わせて購入するのが良いでしょう。
おりんの大きさは「寸」で表されることが多いです。
一寸=約3.03cmです。約3cmと覚えておけばよいでしょう。
初めて購入するのであれば、お店で実際に置いて合わせる事もできますが、買い換える場合は、今ご使用になられているおりんの大きさが何寸なのか測っておくと買いやすいです。

過去帳

過去帳とは仏具の一種で、故人の俗名や戒名、没年月日、亡くなったときの年齢などを記してお祀りするものです。
過去帖と書くこともあり、「鬼籍」や「霊簿」と呼ばれることもあります。
過去帳を見る事で、実際に会った事のないご先祖様のこともわかります。また、過去帳には主に自宅で使われる折本タイプと主に寺院で保管している製本タイプの2つがあります。

過去帳の書き方

過去帳は誰が書くのか分からない方も多いのではないでしょうか。実は過去帖は誰が書くという決まりはなく、誰が書いても良いのです。
しかしながら、戒名などを記載しなければならない為、一般的にはお寺に頼むことが多いです。尚、お寺に依頼した場合は、お布施をお渡しします。
お寺に依頼するタイミングは、戒名をつけてもらう時や四十九日法要の時が多い様です。
金額については直接聞いても失礼に当たりませんが、「お気持ちだけ」と言われる事も多く、その際は5,000円~10,000円が相場になります。
ご自身で記載する事もあるかもしれませんが、その際は筆と墨を用いて書くようにすると、退色しにくいです。用意できない場合は、ボールペンや鉛筆で記入しても構いません。



過去帳の選び方

過去帳は、浄土真宗など宗派によって多少考え方に違いはあるものの、基本的には好みで選んで構いません。ただ、仏壇の大きさやデザインによって、合う合わないはありますので、そういった点を考慮してお選びになるのが良いでしょう。




過去帳の使い方

過去帳は、主に法要や命日の際に使われます。 普段は仏壇の中にしまわれている事が多いですが、月命日などに「見台」に乗せ、供養する方のページを開いて使用します。

数珠

数珠とは

主にお通夜やお葬式、法事などの際に使用される仏具です。
本来お経や念仏を読む回数などを、珠を動かし、数えた事から「数珠」と呼ばれています。念ずる際に用いられることから「念珠」とも呼ばれています。
正式な数珠の珠の数は108個あり、人間の煩悩の数と同数です。

珠の一つずつが108の煩悩を司る仏様であるとされており、数珠を持って手を合わせる事で、

煩悩が消え、清浄な心身にすると考えられています。

お通夜やお葬式、法事等では、数珠を持参する事がマナーですが、宗派の異なるお葬式などに

参列される場合に、ご自身の宗派の数珠を持って参列しても問題ありません。

数珠の種類

数珠には、宗派問わず使う事が出来る「片手数珠」か宗派ごとに異なる「本式数珠」があり、また男性用、女性用によっての違いもあります。


片手数珠:略式数珠ともいわれ、珠の数を減らし、片手で使用出来るようにした数珠。


本式数珠:108個の珠から構成される数珠で二重にして使われる事が多く「二輪数珠」とも呼ばれます。

男性用と女性用の数珠の違いは珠の大きさです。男性用の珠は10mm以上に対し、女性用は7~8mmです。


数珠の持ち方

片手数珠・・・斎場に行く際は、数珠入れやふくさ等で持ち歩きます。

着席時は左手首にかけ、ご焼香の際には、左手で房が下を向いた状態で移動し、合掌の際は、合わせた両手に輪をかける場合と左手に輪を通してから手を合わせる場合とがあります。

ご焼香の際には、左手に数珠をかけ、右手でご焼香を行います。

本式数珠・・・宗派によって持ち方が違います。

〈浄土宗〉房を手前に垂らし、合掌した両手の親指手前にかけます。※4本の指にかける場合もあります。

〈浄土真宗本願寺派〉合掌した両手に輪をかけ、親指と人差し指で挟み、房は真下に垂らします。

〈浄土真宗大谷派〉親珠部分が上にくるようにし、親指と人差し指で挟むように両手にかけ、房は左手甲に垂らします。


〈天台宗〉親玉を上にして二重に巻き、左手にかけ、房は親指の内側に垂らします。

〈真言宗〉輪を両手の中指にかけてそのまま合掌。両側に2つある房は両手の甲に垂らします。

〈臨済宗・曹洞宗〉二重にして左手にかけ、左手の親指と人差し指で挟むように持ち、房はそのまま下に垂らします。


〈日蓮宗〉3本の房が出ている方を左手中指にかけ、輪を八の字にねじり、2本の房が出ている方を右手中指にかけます。


数珠の糸が切れてしまったら凶兆?

数珠はお守りの意味も兼ねています。紐が切れてしまうという事は代わりにあなたの身を守ってくれたという事。 悪い因縁が切れたという事です。ご先祖様や仏様に素直に感謝しましょう。


お通夜やお葬式で数珠を忘れてしまったら?

数珠を忘れてしまっても、故人の為に心を込めて手を合わせれば問題ありません。

大切なのは気持ちです。 むしろ数珠には持ち主の念が宿るとされているので、貸し借りをする方がマナー違反です。

線香

お線香をあげる意味

仏壇、お墓の前でお線香に火をつけ、手を合わせることをお線香をあげる、お線香を焚くとも言いますが、何故お線香をあげるのでしょうか。

①仏様、故人のお食事としてあげる仏教では『仏様、故人は香りを食べる』と考えられています。お線香の煙や、ご飯やお茶の湯気を召し上がります。これを『香食(こうじき)』と言います。宗旨宗派によっては、故人の四十九日の間の旅路の食事として、四十九日は お香を絶やさないという事もあるようです。

②身を清める仏様、故人をお参りするにあたり、お線香の香りで身も心も清めてからご挨拶するためにお線香を焚きます。

③その他、故人に想いを伝えたり、故人のあの世迄の道しるべとするなど、諸説あるようです。

お線香のあげかた

実は宗派によってお線香の本数やおりんを鳴らすか鳴らさないかで異なる場合がありますが、基本的な手順は以下の通りです。

①お仏壇の前に正座し、一礼する。(弔問時はご遺族にも一礼する。)

②ローソクに火をつけ、ローソクからお線香に火をつけます。※マッチやライターで直接火をつけるのはマナー違反です。

③お線香を持つ手と逆の手で扇いで火を消します。※息を吹きかけてお線香やローソクの火を消すのはマナー違反です。仏教では、人間の息は不浄とされています。

④香炉にお線香を立てる。※浄土真宗など宗派によっては寝かせる場合もあります。

⑤おりんを鳴らして、数珠を持って合掌、礼拝する。

⑥静かにローソクの火を消して、一礼し、お仏壇から離れます。


宗派によるお線香のあげ方の違い

浄土宗:おりんは鳴らさず1~3本のお線香を立てる

浄土真宗:おりんは鳴らさず1本のお線香を2つ折りにして寝かせる。

天台宗:お線香を手前に1本、仏様側に2本立てる。

真言宗:お線香を手前に1本、仏様側に2本立てる。

臨済宗:お線香を1本香炉の真ん中に立てる。

曹洞宗:お線香を1本香炉の真ん中に立てる。

日蓮宗:お線香を手前に1本、仏様側に2本立てる。


お線香の種類

仏事に使われるお線香には杉線香と匂い線香の2種類があります。
杉線香は、杉の葉を原料として作られ、煙が多く、主に屋外のお墓参りなどで使われます。
匂い線香は、伽羅や白檀、沈香などの香木を用いたもの、植物の花などの原料を用いたものがあり、煙の少ないタイプなどもあります。
お線香の選び方は、ご自身の好みや故人の好みなど、自由に選んで頂いて構いません。大切なのは、仏様、故人へのお供えの気持ちです。